ギターの外観ってだんだんと飽きてきませんか?
木目が見えるフィニッシュならまだしも塗り潰し系は特にその傾向が顕著です。
そんな時はリフィニッシュしちゃいましょう!
”リフィニッシュ”と聞くと身構えてしまう方も多いかもしれません。
もちろんラッカーグロス仕上げ等はスプレー塗装が入るので、プロレベルの品質を求めるならば、スプレーガン、コンプレッサー、ブース等の専用設備が必要となります。
しかしながら、オイルフィニッシュ であれば素人でも比較的簡単に作業可能です。
本エントリーではその方法をご紹介致します!
用意する物
まずは用意する物ですが以下になります
一つずつ解説します。
ギター
これがないと始まりませんね。
初めて挑戦される方は一番どうでもいいギターを選択しましょう。
またできる限りセットネックではなくボルトオンタイプを選びましょう。
これはボディとネックを切り離せるので作業性が格段に高くなるからです。
今回私が用意したギターはフジゲンのテレキャスFGN NTL-10です。
下記エントリーにてミニマリストギタリストを目指します!とか言った矢先、衝動買いしたものです・・。
アルダーボディ、メイプル指板、レッドメタリック色で、音はTheテレキャス という感じです。
作りはかなりよく、フェンダーメ○シコなんか目じゃない質感です。
しかしながらメタリックレッドがだんだん飽きてきたので、思い切ってリフィニッシュしちゃいます!
今回リフィニッシュするのはボディのみです。
ヒートガン 、スクレーパー
塗装剥がしに使用します。
ヒートガン で塗装がゴム状になるまで温め、スクレーパーで一網打尽にします。
ヒートガン は対応温度が高い割に安価なアストロプロダクツのものを使用しました。
サンドペーパー
塗装後の木地調整とウェットサンディングに使用します。
ウェットサンディングとは塗料が乾いていない状態でサンディングする技法です。
よって液体に耐性のある耐水仕様のペーパーを用意しましょう。
番手は#240-2000くらいまであればあらゆるシチュエーションに対応できます。
オイル
ギター界隈ではエキゾチックオイルが有名ですが、私が今回使用したのはLivos社のオイルです。
理由は高級家具のメンテナンス等に使われており、有害物質を一切含まない自然系オイルだからです。
ギターは当然の如く手で触るものなので、できるだけリスクが低いものを選びたいものです。
ティッシュ
ティッシュはオイルの塗布に使用します。
ウェス でもいいのですが、塗布面積も小さいのでティッシュで十分と判断しました。
キッチンペーパー
オイルの拭き取りに使用します。
拭き取りムラを防ぐため、吸収力の高いキッチンペーパーを用意しましょう。
バーナー(お好みで)
これはななくても良いのですが、用意することを強くお勧めいたします。
何につかうというと木材表面を焼いて焼き色をつけます。
そうすることでアンティークのような深みのあるブラウン色が手に入ります!
おすすめはイワタニのCB-TC-ODORです。
カセットコンロ用のボンベにバーナー部を接続するだけでセット完了します。
また点火はトリガーを引くことで行い、トリガーを握っている間だけ点火します。
スプレーガンのような感覚で使用できるため、大変使い易いです。
作業
1. ハードウェアの取り外し
ボディについたハードウェア類およびネックを全部取り外します。
ギターを丸裸にしちゃいましょう!
余談ですがフジゲンのギターのはんだ付けはめちゃくちゃきれいです。
線材もおそらくベルデン製で、すごく安心感があります。
導電塗料もムラなく塗られています。
正真正銘、これがMade In Japanですね・・
2. 塗装の剥離
塗装を剥がしていきます。
ヒートガンで塗装を温め、柔らかくなったところをスクレーパーで剥がしていきます。
ムニュムニュと塗装が剥がれる感覚は病みつきになります。
しかしながら温めた塗装から、残留するシンナーが揮発し、部屋中臭くなるので外で作業した方がいいかと思います。
3. 下塗りのサンディング
スクレーパーで概ね塗装は剥がせましたが、カラー層が残ってしまいました。
このギターは目止め・下塗りがポリサンディング、カラー層がメタリック+レッドキャンディ、中塗り・上塗りがポリエステルという構造になっているようですが、スクレーパーではレッドキャンディより上までしか取れなかったようです。
そこで残りはペーパーでサンディングして除去します。
私は#240, 320を使用しました。
ポリサンなのでザクザク削れます。
余談ですがNTL-10はアルダー2ピースボディの表面に突き板を貼って、1ピースっぽくしているようです。
おそらく複数ピースの場合、継ぎ目に塗装の段差ができて、「あ、このギター〇ピースだ」と分かってしまうので、それを隠すためのものと考えられます。
コスト的に1ピースにはできないけど、表面だけは1ピースっぽくしとくね、というメーカーの粋な心遣いと受け取りました。
違ったらすみません・・
4. 木地調整
ペーパーで木地を調整していきます。
オイルフィニッシュでツルッとした手触りにしたいのでP2000までかけていきます。
完成したのがこちらになります。
少しヒートガン を近づけすぎて焦げた箇所もありますが、この後がっつり焼くので問題ありません。
5. バーナーで表面を焼く
よくアッシュの冬目だけ焼いて木目を強調するという手法はありますが、このギターはアルダー製のため強調するような木目はほぼありません。
そこで全体的に焼いて、アンティークのような質感を目指します。
塗装のスプレーのように一定のスピードで左右、上下にバーナーを動かしていきます。
コツを掴めば面白いように焼くことができます。
完成しました!
こんがり焼けましたね。
6. サンディング
バーナーで炭化した表面は脆くなっているのでサンディングで落としていきます。
完成したら炭化した木粉を濡れたキッチンペーパーで落としていきます。
#600-#2000でサンディングし、表面を整えました。
最後に濡れたペーパーで研削粉を掃除します。
この際、水で濡れ色になった部分で、塗装後の外観を占うことができます。
既に良い感じですね!
7. オイルフィニッシュ(目止め)
ここからオイルフィニッシュ に入っていきます。
オイルフィニッシュでも私はある程度塗膜感・グロス感のある外観にしたいです。
そこで目止めを行うことにしました。
まずはオイルを多めに塗布し、拭き取らずに1日乾燥させます。
狙い通り塗膜が形成されて、艶も出ています。
8. オイルフィニッシュ(ウェットサンディング)
ここでさらに平滑度を上げるためにウェットサンディングを行います。
これはオイルがまだ乾いていない状態でサンディングすることで、オイルとサンディングによって発生した研削粉の混合物を導管に埋めていく、目止めと同等の効果が得られる処理になります。
ここで私は#1000のペーパーで実施しました。
どんどん表面が平滑になっていくのが分かります。
終了したらキッチンペーパーできれいに拭き取って終了です。
9. 仕上げ塗り
最後に仕上げとしてオイルを塗っていきます。
ウェットサンディングの効果で平滑性が上がっているため、オイルを塗った瞬間は鏡面のように見えます。
最後にキッチンペーパーでよく拭き取って1晩乾燥させます。
仕上がりは下記のようになります。
焼いた木材はアンティークのような落ち着いたブラウンで、木目と相まって奥行き感を演出しています。
また目止めを入れたことで、セミグロス程度の艶感が得られました。
これがさらにアンティーク感に拍車をかけます。
10. 組み付け
外したハードウェアを再度組み付けます。
ただし、また元に戻すだけなのはもったいないので、やれることをやります。
やはり銅箔シールドですね。
NTL-10は純正状態でしっかりと導電塗料が塗られており、各ピックアップキャビティからアース線が出るほどしっかりとアースされていました。
ですが見た目がかっこいいという理由で銅箔シールドに変えていきます 笑
詳しいやり方は下記エントリーをご参照いただけますと幸いです。
感想
さて完成です!
どうでしょう。この見た目。
アンティークっぽい見た目を狙ったのですが、まさにイメージ通りです。
アルダーは木目が寂しい樹種ですが、バーナー処理によって奥行き感が現れました。
さらにオイルフィニッシュ によるしっとりとした質感もたまりません。
まさに「手に馴染む」ような感触です。
これはポリエステルの厚膜塗装では絶対に実現不可能な質感です。
音も薄膜化したからか、高域が鋭くなった気がします。
テレキャスらしいジャキジャキ感が格段にアップしました。
その一方でデメリットもありました。
オイルフィニッシュ は塗膜が薄い分、衝撃が木部にダイレクトにかかります。
そのため、ポリ塗装時には全く問題なかった衝撃でも小さな小傷になってしまいます。
まあ、これがギター表面の劣化を加速させ、さらに貫禄ある外観になると思うのですが、自分で塗装したギターゆえか少し気になりました。
まとめ
いかがだったでしょうか。
オイルによるリフィニッシュはとても簡単とまではいきませんが素人でも十分可能な範疇のカスタムだと思います。
バーナー加工は今回臨時で入れましたが、本来はない工程なので、基本は塗装を剥がして、塗るだけです。
ショップに頼むとギターが一本買えるくらいの額になってしまいますが、自分でやれば材料代だけです。
ぜひトライしてみてください!
ちなみに細かい作業内容やサウンドチェックの様子を下記動画にまとめています。
ご覧いただけますと幸いです。